怪我をした時、冷やしてはいけない(二)

かくして腫れはひき、熱は消え、痛みは鈍化する。
それを見て人は「治った。」と思う。
本当に治ったのか?答えは否である。
症状が消えただけで、組織は損傷したままだ。
傷ついた組織が元通りに修復して、初めて「治った」と言える。


そんなふうに、「症状が出るのが不都合だから」という理由で
身体がせっかくやろうとした修復業務を妨害しておいて
かわりに何かによってその修復作業をしてくれるのかと言えば、
おそらくそうではない。
大抵は症状が無くなればそのまま放置だろう。
「ちょっとまだ痛いけど、あとは自然に良くなるのを待とう。」とか言って。
いつもよりは多少、患部に負担がかからないように気遣ってくれるかもしれないが
出来るのはそれくらいのことである。


私が身体なら、こう思うね。
「えええええ!何それ?初めに思いっきり仕事の邪魔したくせに、あと丸投げかよ!
もうほんとに、まじで、勘弁してえー」
さらに「やってらんねーな。」と呟きながら、
職務を放棄して、寝っ転がって鼻ほじっちゃうかもしれない。


しかし、身体は絶対にそんなことはしない。
身体はもっとずっと、健気で辛抱強いのである。
与えられた条件の中で、持てる力の全てで
怪我を治すために出来ることを精一杯やろうとする。
だから時間がかかってもちゃんと完治する場合もあるだろう。
だけど、怪我の程度によっては完全に組織の損傷を修復出来ず、
一時治ったように感じても、いわゆる「古傷」となって
事あるごとに痛みがぶり返したり、あるいは年を重ねて筋力が低下した時
再び痛み出したりすることだってある。


もし、早く完全に怪我を治したいと思うなら
冷やすよりむしろ温める方が良い。
その結果、患部の腫れはひどくなり、熱を持ち、痛みは増すだろう。
しばらく動けないかもしれない。
だけど身体にしてみたら、損傷した組織の修復のためにやろうとしていることを
後押しされている状態である。
冷やされて、妨害されるよりはずっと良い仕事ができる。


病気にせよ、怪我にせよ「炎症」というのは、
身体に生じたトラブルを、身体が自力で修復しようとした時に発生する。
行き過ぎた時や、慢性化していつまでも続く場合は
薬などによって抑えた方が良いこともあるだろう。
臨機応変に対応すればいい。
しかし「炎症=悪いもの」だから「出たらとにかく消しとけ」
という発想は、どうにか変えて欲しいのだ。
皆さんの健やかな人生を応援することを生業としている者の
切なる願いである。